漆芸品の3Dスキャンは可能か? ー 実証 ー
3Dスキャンが難しい素材って?
従来のレーザースキャニングやフォトグラメトリ技術では、どうしても「反射の強いもの」や「透明なもの」「細い・薄いもの」などスキャンして3Dモデルとして再現するのに苦手な素材がありました。
レーザースキャニングは、高性能なセンサーであれば0.05㎜くらいの精度から再現できる優れたものですが、レーザー光が透過してしまうガラスや水などの素材では、光の反射が少なすぎて「物体」として認識できない、また反射が強すぎる鏡やメッキパーツなどでは写り込んでいる先の物体から光の減衰が少ないまま返ってくるため、「鏡の向こう側に写り込んだものが実在する」と誤認識してしまい、写り込んだものをそのままモデリングしてしまう、という事が起こって形状が崩れてしまうのです。
これは写真を元に作成するフォトグラメトリでも同様です。
かといって、接触型のスキャナで繊細な美術品・工芸品のスキャンは破損の恐れがあるので使えません。何とか非接触スキャニングが可能な方法はないかと2年ほどの歳月を経たところで、3DGSという新技術が登場しました。
「3DGS(Gaussian Splatting)」とは?
3DGS(Gaussian Splatting)は、別記事でも紹介したとおり2023年8月に発表された新しい3Dスキャニングの技術です。画像や映像を元に、生成AIによって様々な方向から「透明度・奥行き・輝度・彩度」のガウス関数化した情報を投げつけることで、見た目非常に再現性の高い3D空間やオブジェとして再現される、「ラジアンス・フィールド(Radiance Fields)法」という方法で、これまでのスキャニング方法とポリゴンメッシュでは取得できなかった「反射の強いもの」や「透明なもの」「細い・薄いもの」が、非常に自然に再現されます。
漆芸品、蒔絵の3Dスキャンは3DGSで可能か?
今回、3年前に飛田新地の「鯛よし百番」3Dアーカイブ作成からお世話になっています株式会社サミット不動産の杉浦さんのご紹介で、杉浦さんと共に姫路にある「漆芸江藤」さまの工房にお伺い撮影可能か実証しました。
漆器や螺鈿の素晴らしい工芸作品の制作や、文化財の修復などをされている漆工房「漆芸江藤」様にて、蒔絵の作品 螺鈿蒔絵八角箱「夏の華」と、修復品の鎌倉・室町時代の彫刻とみられる阿吽像を、注目の3DGS(Gaussian Splatting)にて記録し、材質的にも非常に綺麗な状態のモデルを作成できたと思います。
許可をいただけましたので、3Dでみられる形で公開させていただけることに!!ちょっと重いかもしれませんが、是非ご覧ください。